二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「あなたはここで寝泊まりしているの、チャンピオン?」
ダグラスが降りてしまったので、乃亜はひとりでチャンピオンのたてがみを撫でながらささやいた。
おそらくこの馬は英語を理解している。
チャンピオンは問いを肯定するように首を縦に振るのと同時に、尻尾をブンブンと派手に振った。
ダグラスが手綱を引いて、乃亜を乗せたチャンピオンを厩舎へといざなう。
動物の匂いがした。獣の匂い。
チャンピオン単体から発せられるよりもずっと強い、牧草や藁や、馬糞の匂いが混じった、もっとこう……総合的な動物の生活臭。
厩舎の入り口に立つと、ダグラスはチャンピオンを止めて乃亜に手を伸ばした。降りるのを手伝ってくれるのだと気づいて、その手に甘えることにした。
もちろんダグラスのような優雅さはなかったけれど、なんとか無事に降馬に成功した。
「ひゃあっ」
足が地面についた途端に、足元に散らばった干し草に滑って転びそうになる。ダグラスはそれを予測していたのか、乃亜の二の腕をしっかり掴んでくれていたので、みじめな転倒は回避できた。
「あ……りがとうございます、ごめんなさい」
乃亜がきちんと立ったのを確認すると、ダグラスは半分しか開いていなかった厩舎の入り口を全開にした。スライディングドアになっていて、車輪がゴロゴロと音を立てて横に開く。
「わぁ……すごい、いっぱい……」
厩舎の中には数え切れないくらいの馬がいた。
いや、数え切れないというのは大袈裟かもしれない……パッと見ただけでも三十……もしかしたら四十頭くらいいるだろうか。
ダグラスと乃亜の方に顔を向けている個体もいれば、そんなことはお構いなしに足元の干し草を食み続けているのも少なくない。
でもどの馬も光沢のある毛並みが美しかった。