二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「足元に気をつけてくれ。その靴じゃここは歩きづらいはずだ」
「はい……」
正直、運動靴で歩きづらい場所というのは想像がつかなかった。だって歩くための靴なのに。
とはいえ、さすがにここではダグラスの言に従うのが賢いらしいことを学びはじめていたので、乃亜は大人しく足元に注意しながら進むことにした。
厩舎の中は鉄パイプのようなものでできた低い柵で個々の馬を分けて住まわせている個所と、背の高い板で個室のように分けている区画がある。
ダグラスはチャンピオンを低い柵の方に入れた。
「乗せてくれてありがとう……チャンピオン。素晴らしい体験だったわ。また今度も乗せてくれる?」
チャンピオンの返事は、鼻水っぽい粘液が掛かってきそうなくらい激しい鼻息だった。ブホッ。
「もうっ。それはイエスね、そうでしょう?」
粘液っぽいものを手で払いながらチャンピオンに向かって微笑むと、乃亜はダグラスに向き直った。「そうですよね?」
「そうらしいな。ただ、ひとりで乗るのはおすすめしないよ。こいつは好き嫌いが激しい」
「へえ……そんな感じはしませんでしたけど、そう仰るなら」
どちらかといえば、好き嫌いが激しいのはチャンピオンよりその馬主の方では? と言いかけたのを飲み込む。
別にダグラスと口論をするためにここに来たわけではないのだ。乃亜には目的がある。この牧場の手伝いをするという目的が。
「さあ、なにをすればいいんですか? なんでもできます。馬の歯磨きだってしますよ」