二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「……馬の歯を磨く必要はないよ」
とりあえずダグラスはそう言ったけれど、その案を前向きに考えているみたいに乃亜を見つめている。
「じゃあ、なにを……」
「とりあえず通路の掃除を手伝ってくれ。その恰好じゃできるのはそれくらいだろうから」
壁に立てかけてあった掃除道具の中から、最もシンプルな熊手っぽい鍬を手渡される。乃亜はできるだけ勇ましくその鍬を握ってうなずいた。
他に比べるものがないけれど、厩舎の中はかなり清潔に保たれている。
それでも、馬が皿に干し草を乗せて上品に食事をとることができるわけではなくて、柵から藁があちこちにはみ出て散らばっていた。
「柵の中には入らないこと。それからこの列の一番奥の黒馬には近づかないこと。あそこは俺がやる」
ダグラスが忠告した。
「はい……。でも、どうして?」
「あの黒いのは悪魔の化身なんだ。すでに三人の従業員が奴のせいで怪我をしている」
「はあ」
「最初に言った通り、俺は君に手伝いを期待しているわけじゃない。嫌ならいつでもやめていい」
もしかしてダグラスは一周回って乃亜を焚きつけているのだろうか。そんなことを言われると、逆に猛烈に働いて見返したくなるのが人間の性だというのに。
「わかりました。完璧にやってみせます」
「…………」