二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 乃亜は一応の真実を告白した。ただ、自分でも賢い説明の仕方だとは思えなかったから、ダグラスの眉間の皺がさらに深くなったのを責めることはできない。

「君は自分の頭をフライパンで殴ったのか?」
「そういうわけでは。えっと……お……落ちてきて……?」
「あのキャビンに頭より高い位置のキャビネットはなかったはずだ」
「違います。あの殺人の悲鳴を聞いたあと、被害者を助けなくちゃと思ってフライパンを防具代わりにして外に出たんです」
「……フクロウ」
「そうだったみたいですね。でもあのときはまだ知らなくて。外は完全に暗くて、キャビンの周りのこともあまり知らなくて……なにか切り株みたいなものに躓いて、後ろ向きに転んだんです。そのとき手にしていたフライパンがここに落ちてきました」

 サングラスを外してくれたとはいえ、ダグラスは表情だけですべてを読めるような明け透けなタイプではなかった。
 乃亜を見つめる灰色の瞳は、なにがしかの深い感情をはらんではいる。

 それが乃亜の説明に対する理解なのか、感心なのか、呆れなのかはわからない。多分呆れなのではないかと、なんとなく予感はしたけれど。

 ダグラスはくいっと顎を突き出して、それでなくても見下ろす形だった乃亜をさらに上方から見下ろした。

「……どこからコメントするべきか悩んでいる」
 と、カウボーイは言って、かぶりを振りながら長いため息を吐いて乃亜の二の腕を放した。
 そして、頭痛がするみたいに片手で眉間を押さえた。

「ひとつ、もし殺人現場に出くわしたら、外に出てくるのではなく隠れるんだ。なにか有用な武器を持っていない限りは」
「だからフライパンを」
「ふたつ、フライパンは武器ではない。防具でもない。この場合は火器のことを言っている。ハンドガン、猟銃、ライフル、そういったもののことだ」

 乃亜はふるりと身震いした。
 たしかに乃亜はアメリカ大陸のど真ん中にいるけれど、そんなものを手にするオプションをさらりと告げられると背筋が凍る。

「そして、みっつ目……。これが一番重要だ。怪我をしたならきちんと俺に言うべきだった。頭を打っていたなら余計に、すぐ眠るのは危ない。誰かが君を看ているべきだったんだよ」

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