二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
乃亜は癇癪持ちではない。
でも……。
でも、ひとには触れてはいけない弱みがある。超えてはいけない一線が。ダグラスは乃亜のそれを踏みにじった。乃亜だけでなく曾祖母の名誉まで。
「やめろ! なにをしているんだ、気でも狂ったのか──」
たかってくるハエを追い払うみたいに、ダグラスは背後の乃亜をどうにかしようと腕を上げた。
殴られるとは思わなかったけれど、突き飛ばされるくらいは覚悟していたのに、ダグラスはただ乃亜の干し草攻撃をかわすために両腕を宙に浮かせるだけだった。
乃亜はなにも言い返せなかった。
ただ喉が詰まって、こめかみがツンと痛んで、乃亜はボロボロと涙をこぼしながらそれでもダグラスに干し草を投げつけるのをやめなかった。
それしかできなかったから。
そうして数分もみ合っているうちに、乃亜の力も、怒りも、手にした干し草もなくなっていく。最後にダグラスの頭からカウボーイハットが地面に落ちて、なにかが終わった気がした。
どうして人生はこうもうまくいかないんだろう──あちらでは身持ちの硬さを理由に捨てられ、こちらでは身持ちが悪いみたいに罵られる。
乃亜は厩舎の地面につっぷして肩を震わせて泣いた。