二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
そう言いながら、ダグラスは乃亜の頭にも乗った干し草を取ってくれた。彼自身も干し草まみれなのに、それは軽く頭を振って落とすだけにとどめている。
ふたりとも厩舎の地面に座り込んだような格好のまま、互いの顔をじっと見つめ合った。
「君がこんなに勇敢だとは思わなかった」
と、ダグラスはつぶやいて、しばらくは黙っていた。しかし次第に肩を震わせて笑いはじめた。
──笑い!
もしはじめて見る笑顔のダグラスがこんなに素敵じゃなければ、今度は干し草どころか馬糞を投げつけることだって考えた。でも……。
でも。
「じゃあ、なんだと思ったんですか。大事な純潔をあざ笑われてだまって泣き寝入りする弱虫だとでも……?」
ダグラスの笑いがぴたりと止まった。
「ちょっと待ってくれ、君は本当に処女なのか?」
むむ!
「……あなたこそちょっと待ってください。カウボーイはみんなあなたみたいに失礼なの?」
「イエス。それどころか、俺はそんなに口の悪い方じゃないよ。先に俺の質問に答えてくれ」
「そうです! その通りよ!」
乃亜は破れかぶれに声を上げた。
おそらく乃亜の羞恥心とかマナーというものは、あのポンコツレンタカーの冷却水の蒸気とともに、コロラドの荒野で湯気になって消えたのだ。
「広瀬乃亜、二十四歳! 男のひととはキスもしたことがありません! 最後の恋人にはそのせいで振られました! ひと月前のことよ。この答えでご満足ですか、クリント・イーストウッドさん!」
ダグラスはその灰色の瞳を大きく瞠目して──そして、さっきよりもさらに大きな声で笑いはじめた。