きっと、夏のこと
そのあともあの先輩がどうだとか、
広報の先輩がどうだとか、
ボーカルがどうだとか、取り留めのない話をたくさんした。
彼女と別れて、ひとりで帰る道。
ふと、牧田さんのことを思い出した。
「牧田さんの連絡先持ってるのって、もしかしてレアなのかな」
そんなことを考えて、
考えすぎだなって、ひとりで笑った。
いつのまにか、牧田さんへの恋心は、もう消えている気がしていた。
就職を報告してくれなかった牧田さん。
卒業を報告してくれなかった牧田さん。
連絡先は教えてくれるのに、
それ以外のことは何も教えてくれなかった牧田さん。
私ばっかりだったんだな、って。
大学生になって、初めて分かった。
「たしかに、牧田さんも三男だったな」
そんなことを思い出しながら、
私はその記憶を、
いい思い出の箱にそっと押し込んだ。