きっと、夏のこと

「おはよう」


の音にも


「ごはん食べよう」


の声にも慣れてきて


今度は私からの


「帰ろ」


まだちょっと照れくさい。



一緒に廊下を歩くと、

教室では感じられなかった風が肌をくすぐる。

遠くで笑い声、シャツの袖を揺らす風、

どこかで鳥が鳴いている。



「今日、ドーナツ買いに行く?」


「うん」


彼女の提案に私は頷いた。


袋の中で揺れる甘い匂い、少し熱を帯びた風が髪を撫でる。


何でもない帰り道なのに、空気の一つひとつが、少し特別に思えた。


緑が少しずつ濃くなっていく校庭を横目に、


夏の気配がじんわりと、


日常に混ざってくる。
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