きっと、夏のこと
やっと隙間時間ができて裏方の部屋に向かうと、懐かしい甘い匂いが鼻を掠めた。
香水でもなくて、 なんか居心地の良い匂い。
それなのにたばこの匂いの中でも強く居続ける。
顔を挙げた時の私はどんな顔をしていたのかな、っと思う。
牧田さんがいた。
「あの、お久しぶりです」
こっちをみた牧田さんは驚いた顔をして、
「久しぶり」 と声をかけてくれた。
「本当に軽音入ってくれたんだ、嬉しい」
私は笑顔でうなづくことしかできなかった。
牧田さんはきっと、イベントが楽しかったのかなとか、楽器弾いてみたくなったのかなとか思っている。
『牧田さんを追いかけて入りました』
なんて言えない言葉が頭の中を走り回っていた。