きっと、夏のこと

やっと隙間時間ができて裏方の部屋に向かうと、懐かしい甘い匂いが鼻を掠めた。


香水でもなくて、 なんか居心地の良い匂い。


それなのにたばこの匂いの中でも強く居続ける。


顔を挙げた時の私はどんな顔をしていたのかな、っと思う。





牧田さんがいた。





「あの、お久しぶりです」


こっちをみた牧田さんは驚いた顔をして、


「久しぶり」 と声をかけてくれた。


「本当に軽音入ってくれたんだ、嬉しい」


私は笑顔でうなづくことしかできなかった。


牧田さんはきっと、イベントが楽しかったのかなとか、楽器弾いてみたくなったのかなとか思っている。



『牧田さんを追いかけて入りました』


なんて言えない言葉が頭の中を走り回っていた。



< 57 / 89 >

この作品をシェア

pagetop