凪渡くん、このままじゃ溶けてしまいます【完全版】
「このおにぎりみたいに手作りじゃないけど、食べないよりはマシでしょ」

凪渡くんは「ありがとう」と言って、パンの袋を開ける。

初めて二人で食べた夕飯は、おにぎりとピザパン。

しかも薄暗い静かな夜の公園。

お洒落でも、可愛くも、何でもない光景。

でも、なんか案外悪くなかった。

この時間は嫌じゃなかった。




「莉帆ちゃん、明日も来てね」



「言われなくても来るってば」




そんな可愛げもない会話。

でも、私と凪渡くんらしくてつい笑いそうになってしまう。

きっと私はまだ凪渡くんのことを全然知らない。

でも知らないなりに知ろうと思っていて、知らないなりに今知っていることで凪渡くんと向き合っている。

ピザパンをかじる凪渡くんは、校内での王子様らしさは全くなくて、私だけが知っている王子様の裏側。

月だけが照らしている暗い公園で、まるで王子様は私だけの秘密になっていた。
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