凪渡くん、このままじゃ溶けてしまいます【完全版】
「ありがとう」

「別に」

仁くんはそれだけ言うと、まだ仕事に戻っていく。

余計なことは言わず、仕事は真面目に。

店長が前に「桐ヶ谷がいないとバイトが回らない」と言ってきたが、気持ちは分かる。

でも、同い年で同じ時期にこのバイトに入ったはずなのにこの違いは何だろう?

はぁ……私ももっと頑張らないと。

バイトが終わってすぐに着替えを済まして、バイト先を出る。

店内の籠もった空気とは違って、外は風が吹いていて気持ち良い。

にしても、風が強いな。

これから天気が荒れてくるのかな……。


「って、もしかして降ってきた?」


ぽつっと冷たい水滴が頬に当たったのが分かった。

そして、今度はぽつっともう一滴の水滴が私の(そで)を濡らす。
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