凪渡くん、このままじゃ溶けてしまいます【完全版】
「どうしよう、傘持ってきてないのに……」

しかも、凪渡くんとの待ち合わせ場所は公園。

雨が降ったら待ち合わせはなしになると思うが、わざわざその場合のことを話しておいたことはない。

とりあえず、早くあの公園に向かわないと……!

私が濡れることを覚悟で飛び出そうとした瞬間、後ろから声をかけられた。

「白木、傘忘れたの?」

「仁くん……!」

仁くんは私の足元から頭まで見た後、全てを察したようだった。

「これ、貸すわ」

仁くんが自分の持っていた黒い傘を私に差し出す。

「え、でも。仁くん、傘を二本持ってるの?」

「持ってないけど」

「じゃあ、要らないよ!」

「大人しく借りとけば? 家の方向も違うのに、二人で一本使うのもおかしいだろ」

そんなことを言われても、傘の持ち主が雨に濡れて、私だけ濡れずに帰るなんておかしいと思ってしまう。

「あ、でも仁くんの家って……公園を通るよね?」

「公園って、ここから近い滑り台しかない公園?」

「そう! 私、今日はそこに用事があるの。そこまで傘に入れてもらえると嬉しいな」

「今日、雨だけど。その用事ってこんな雨の中行われるの?」

いつも踏み込まない仁くんでさえ、この雨の中、公園に行くと言われたら不思議に思うものらしい。

そうだよね、通常あり得ない行動だし。
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