凪渡くん、このままじゃ溶けてしまいます【完全版】
「ちゃんとここで働いたらダメな理由を言って。じゃないと分からない」


「莉帆ちゃんは相変わらず直球だね。前に言ったでしょ、どこの家も家の決めた相手じゃないと許してくれないって。俺は幸い婚約者はいないけど、俺の行動は割と父親に筒抜けなんだよね。俺が好きな相手が莉帆ちゃんだってこともバレてる」


「…………」


「あ、やっと意味がわかった? ここは俺にとっても味方が少ないけど、莉帆ちゃんも同じ状況ってこと」


凪渡くんはわざとヘラヘラといつも通りの話し方で、簡単そうにそう告げる。

だからこそ、そういう態度だからこそ、私も負けたくないんだ。







「じゃあ、凪渡くんと一緒に戦えるね」






「え?」






「私、辞めないから。ていうか、一度始めたバイトを一日で辞めるとか私のプライドが許さない」






「はぁ、莉帆ちゃんって本当お子ちゃま。大人しく守られて、何も知らない顔で、笑っててよ。俺がどんな状況にいようと俺が頑張るから、俺がいつか家を出て自由になったら格好良く迎えにいかせてよ」






「嫌。知らないからって理由で笑って、相手が頑張っていることに薄っすら気づいているのに気づかないふりをして、愛されることだけを当たり前だと思う。そんなの嫌。凪渡くんが言ったんでしょ? 私のせいで『愛があればなんでも出来る』って言葉に囚われているんでしょ。私の気持ちが固まってなくても、自分の愛を利用してほしいって言ったんでしょ。それで……私に『責任とってよ、莉帆ちゃん』って言ったんでしょ」









格好良くあれ、私。









「責任取るよ、一緒に戦ってあげる」








負けるもんか。

私だって住むなら「愛があれば何でも出来る」世界が良い。

そんな馬鹿みたいで、美しい世界に住んでみたい。


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