凪渡くん、このままじゃ溶けてしまいます【完全版】
「白木、俺の家の近くに安くて美味しいケーキ屋があるんだけど。そこの菓子折りは?」

「そんなケーキ屋さんあるの!? 教えてほしい!」

「じゃあ、今日のバイト帰りに案内するわ。どうせ俺の家の通り道だし」

「ありがとう!」

仁くんはまだ何かを言いたげだったが、結局何も言わないでいてくれた。

それは仁くんの優しさなのだろう。

バイトが終われば、まだ夕方で時間があった。

仁くんが着替え終わるまで、カフェの前で待つ。


(そういえば、いつもカフェ終わりはあの公園に行っていたのに)


凪渡くんの家でバイトするようになってから、凪渡くんの部屋でお弁当や夕食を食べさせてもらうことはあっても、公園のベンチでお弁当を食べる時間は減っていた。

凪渡くんの家にいることが多いのだから、それは当たり前のことなのだけれど、どこか寂しくも感じていて。

多分……本当に多分だけど、凪渡くんの部屋は大きくて、二人で夕飯を食べるにしても机を挟んで向かい合って座ることが出来る。

それはそれで良いのだけれど、小さなベンチで二人で並んでいた時間も好きだったのだと今になってやっと実感した。

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