バッドエンド後の死に戻り転生悪役令嬢は、ヤンデレ皇帝の狂愛を受ける 私が救済の歌姫なんて、聞いてませんわ!
 彼は一瞬だけこちらをじっと見つめてきたが、すぐに視線を戻す。
 この場で兄達の望みどおりにすれば、せっかく心を許し始めた私の好感度が急降下すると心配になっているのかもしれない。

「簡単に、楽になれると思うな」

 ダグラスが地を這うような怒声を響かせる姿を目にした私は、彼らの発声を封じた。

 もっと苦しめ。
 もっと、惨めな姿を晒せ。

 心の中で思い浮かんだ醜き感情に引っ張られたせいか。
 ドロドロとした恐ろしい憎悪が全身に巡り、熱を帯びる。

 ――身体の奥底が、ジクジクと疼く。
 呼吸が荒くなり、歌が途切れ始めてしまった。

 喉が限界を訴えかけている。
 私は「もう少しだけ、頑張って」と己に言い聞かせると、ガクガクと小刻みに震えて今にも崩れ落ちてしまいそうな膝に力を込めた。

「ヴァルツハイユ帝国の王族は、俺だけでいい」
「うわぁああ……!」

 ダグラスの宣言とともに、前皇帝と2人の兄達が一斉に頭をかかえて失神した。

 ――これでしばらくは、私達に危害が加わることはなさそう……。

 その直後、張り詰めていた緊張の糸が切れ、カクンと全身の力が抜けた。
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