バッドエンド後の死に戻り転生悪役令嬢は、ヤンデレ皇帝の狂愛を受ける 私が救済の歌姫なんて、聞いてませんわ!
 ――歌が途切れる。

 全身が火照り、腹部がジクジクと疼いていた。

「ルリミカ……!」

 両腕に抱きかかえていた剣が、カランカランと音を立てて転がり落ちる。
 私が完全に床へ叩きつけられる前に、こちらの名を呼んだ彼が抱き留めてくれた。

「すまない。無理をさせてしまったな……」
「この程度……。どうってこと、なくってよ……」

 こんな時ですらも強がる自分は、周りからどんなふうに見えていたのだろうか?

 ダグラスは今にも泣き出しそうなほどに瞳を潤ませ、己を抱きしめる力を強めた。

「皇帝になったばかりの殿方が、していいような顔ではありませんわね……」
「最愛の女性が、苦しげな表情を浮かべているんだ。心配するのは、当然だろう!?」

 彼は苛立ちを隠せない様子で吐き捨てる。
 どうやら、相当余裕がないらしい。

 ――私に歌うように命じた以上、こうなることはある程度予想がついただろうに……。

「この程度のトラブルで、我を失うなんて……。皇帝、失格でしてよ……?」

 彼が皇帝候補として名乗りを上げられなかった理由を悟り、呆れたように口元を綻ばせる。
< 172 / 260 >

この作品をシェア

pagetop