バッドエンド後の死に戻り転生悪役令嬢は、ヤンデレ皇帝の狂愛を受ける 私が救済の歌姫なんて、聞いてませんわ!
「な……っ! あなたの目は、節穴ですわ!」
「褒め言葉として、受け取っておこう」
「きぃ~! どうして、私を嫌いになってくださらないんですの!?」
「前世から君を、愛しているからだ」
「はぁ!?」

 到底令嬢とは思えぬ素っ頓狂な声を上げれば、彼は嘘偽りがないことを証明するように――瞳の奥底に仄暗い光を宿す。
 そうして、何度目かわからぬ思いの丈を伝えてきた。

「この想いを、捨て去ることなど出来はしない。俺は必ず、君を手に入れてみせる」
「な……っ!」

 真剣味を増した水色の瞳が、こちらをじっと見つめている。
 嘘偽りのない愛をぶつけられたせいか、私の頬は自分の意志に反して赤らんでいた。

 ――こ、これは恋なんかじゃ、ないんだから!

 何度も心の中で否定をしながら、ごろりと右側へ身体を向け、ドシンと床に転がる。

「お嬢様!?」

 ラルラの悲鳴が聞こえたが、今は「心配は無用でしてよ」と返答する余裕もない。
 私はどうにかダグラスから身体を離すことに成功すると、光の速さで逃走を図った。

「ごきげんよう!」

 淑女らしい挨拶をしてからこの場を離脱したのを、誰か褒めてほしい。

 ――推しが尊すぎて死にそうとか、そんなことは1ミリも思ってないから……!

 私は心の中で何度も彼に対するときめきを否定すると、急いで自室へ避難したのだった。
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