バッドエンド後の死に戻り転生悪役令嬢は、ヤンデレ皇帝の狂愛を受ける 私が救済の歌姫なんて、聞いてませんわ!
「ん……」

 眠りから目覚めた私の目に飛び込んで来たのは、推しがこちらの手を握りしめてじっと熱を帯びた表情で微動だにしない姿だった。

「そんなふうに強く握りしめなくたって、私は逃げませんわよ」
「ルリミカ……!」

 呆れたように軽口を叩けば、彼は感極まった様子で嗚咽を漏らす。
 すでに修復不可能な状態まで来てはいるが、私はまだ婚約者のいる身だ。
 こんなふうにほかの男と肌を触れ合わせる姿なんて見られたら、こちらが有責になってしまいかねない。

「離してくださる? 噂になるのは、避けたいのですけれど」
「ゼヴァイツ公爵家に君を運び込む際、ベリアージュ公爵の許可は取った。問題ない」
「ここは、私の自室ではないんですの?」
「ああ。俺の部屋だ」

 彼がべリアージュ公爵家ではなくゼヴァイツ公爵家に運び込んだ理由は、説明を受けずともなんとなく理解できた。
 あそこには、妹が暮らしている。
 いまだに毎日のように婚約者は「私と話がしたい」と押しかけてくるし、ダグラスが弱った自分を抱き上げて連れてきたら、面倒なことになると危惧したのだろう。
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