【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
3.回りだした原作強制力
 侍従から時間はいつでもいいと言われたが、さっさと済まそうと寝ている二人をそのままに、着替えて部屋から出る。

 案内されたのは中庭だ。
 まだ朝は寒い気候の中、そこに模造剣で素振りをしているギルフォードがいた。

 侍従とともに現れたエメリアの姿を見て、彼がわずかに目を見開いて動きを止めた。

 エメリアも少しだけ怯む。いつから鍛錬していたのか、剣を持つ彼は上半身裸だ。

 しなやかな筋肉のついた身体が朝陽に照らされている。

 その身体にはいくつも古い傷がついていた。
 初夜のときは暗かったし混乱していて、あまり見ていなかったもの。

「……」
「……」

 タオルをギルフォードに渡して、侍従が下がる。

 向かい合ったまま二人とも無言だった。
 この時間にエメリアが来るとは思っていなかったのだろう、ギルフォードが言葉を選んでいるのが伝わってきた。

「……何か御用でしょうか」

 居心地の悪さから逃げようと、自分から話をうながす。

(なにか粗相をしたかしら。でも舞踏会を退出するまで普通だったし……)

 姿勢と表情は動かさず、エメリアはあれこれ頭を巡らせた。

 しばらくして、剣を鞘に戻した彼が口を開いた。

「……男を部屋に入れたそうだな」
「おとこ」

 一瞬何を言われているのかわからなくて反応ができない。

(護衛のこと?)

 頭に?を浮かべるエメリアに、ギルフォードの眉間のしわが深くなった。
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