【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
 風邪だろうか。思わず腕をさする。

「おかあさま、どうしましたか」
「ううん、なんでもないわ」

 隣に座る心配そうなフレンにそう返す。
 幸い寒気は一瞬で消えたようだ。ということで気を取り直し、エメリアは今しがた温室に姿を現した夫ギルフォードを見た。

「それで……なんでしたっけ」
「視察の件だ」

 端的に言ったギルフォードは、ちらりとフレンの食べているパンケーキを見て、空いている席に座る。
 すぐに侍従やメイドがお茶を淹れ直してくれた。

「国内の視察で二週間ほど王宮を出る。フレンも一緒に」

 イヴァンが国に帰ってから三ヶ月ほどが経った。妖精の通信により国に無事に戻り、元気に過ごしていると聞いている。

 その間にギルフォードの後押しもあり、すでにフレンは皇太子として承認された。
 妖精の愛し子としての素質ももちろん加味された上で。

 視察は、お披露目の意味もあるはずだ。同時にフレンに早めに国内を見せたいということだろう。

 そこまで考えて、そっとエメリアは視線を逸らした。

(フレンとギルフォードだけで視察……大丈夫かしら)

 とはいえ、幸い特訓のおかげで二人の距離は近づいている。
 皇帝と皇太子の視察なら護衛も、世話してくれる者も大勢付いていくだろう。

 心配は心配だが、フレンの将来のためにエメリアが止める理由はない。
 そんなことを腕を組みながら考えていると、ギルフォードが言葉を続けた。

「皇妃として、君も視察に同行してほしい」
「――へ?」

 まぬけな声が出る。
 そんなエメリアを見て、ギルフォードは息を吐いた。

「……今の話に自分を入れないところが、らしいというか……」
「で、ですが」
「おかあさまもいっしょに旅行ですか!」
「旅行ではなく視察だ」

 これは意外な展開である。

 原作ではギルフォードは一切エメリアに皇妃の仕事をさせなかった。もちろん視察にも連れていくこともなかったはずだ。

(どういう心境の変化なの?)

 思わず警戒してしまうエメリアだった。
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