【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
5.継母メレディスのたくらみ
「……はぁあああカワイイ……」

 妖精メレディスは、深い森の奥にある棲家でそう呟いた。

 うっとりと頬に手を置いて眺めているのは、机の上に置いている大きな黒水晶。
 その表面に、黒い髪に赤い目の美しい女性の顔が反射する。

 それとは別に黒水晶の内部に映るのは、花が咲き乱れる温室だ。

 そこでは大人用の椅子に、銀の髪の愛らしい女の子が座っていた。
 小さく切ったパンケーキを一生懸命頬張っている彼女の周りには、妖精が飛んでいた。

「ふふ、そんなにほっぺたいっぱいに詰め込んで……」

 映像の中、隣に座る人物が女の子の口元を拭った。
 プラチナブロンドをゆるく結んでいる彼女は優しい表情で女の子に声をかける。

「うっ」

 映像を見て、メレディスは胸を押さえて机に突っ伏した。

「……うぅ」

 しばらく身悶えた彼女は水晶を抱きしめた。

「……でもエメリアはもっと可愛い……!」

 しばらく水晶を抱きしめていたが、その態勢だと映像が見えないことに気づいてきちんと座り直す。

「はぁ……」

 頬杖をついて、メレディスは黒水晶に映る母子を指先でつんつん突く。

「あのくそ妖精王の愛し子なんて殺すべき存在だけど、エメリアの子なら話は別よねぇ……」

 悩ましげに息を吐いたところで、映像の中の温室に一人の男が現れた。

 銀の髪の凛々しい男である。

「皇帝は……どうでもいいかしら」

 しかし彼が母子のいるテーブルに近づいたので二人の姿が見えなくなった。

「――……邪魔よ、皇帝」

 黒く塗られた爪先が水晶に食い込み、音を立てて黒水晶は粉々になった。

「あっ! せっかく苦労して忍び込ませたのに!」

 毒気と瘴気があちこちで渦を巻く森の奥で、そんな悲鳴が響いた。


◇

「……っ」

 同時刻、王宮の中庭にある温室でエメリアはふるっと体を震わせた。

(今、ものすごく悪寒がしたような!)
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