【完結】転生したら、退場予定の悪妃になりまして
 視察に出ることを告げられた翌日。


 エメリアがフレンとともにギルフォードに指示された部屋に赴くと……そこにはずらりと外出着やドレスを着たトルソーが並んでいた。

 控えるのは首にメジャーをかけた仕立て屋だ。
 白い髪の小柄な彼はにこにこと笑って言う。

「陛下から、視察にあたりお二人の服を新調するようにとご用命を受けました。サンプルをお持ちしたのですが、お気に召すものはありますでしょうか」

 工房の印を見れば、先代から王族の服を作っているところ。
 並んでいるのは生地はもちろん仕立ても素晴らしく、刺繍や装飾も一流品ばかり。

 ここ数年、擦り切れた服で農作業に従事していた目には眩しすぎるくらいである。

(これを、ギルフォードが?)

 視察の同行の件といい、なんだか調子がまたくるう。

「せ、せっかくですけれど、今あるもので十分ですので……」
「王妃様はそうおっしゃるかと思いまして」

 仕立て屋が部屋の隅に控える弟子たちに合図する。彼らは、並んでいるサンプルの陰から、ごとりと小さなトルソーを出した。
 飾られている服と同じデザインで、子ども用の服だ。
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