人質令嬢、第二王子と国家反逆を狙う
 数日後。ようやく起き上がれるようになったモルドレッド殿下は、休む間もなく忙しく駆け回っていた。


 殿下がお休みの間は、父とアグラヴェイン卿、それからついてきてくださった貴族の方々や城の政務官たちで仕事を回していたけれど、それも長くは続けられない。

 貴族の方々にはそれぞれ領地経営の仕事があるし、父や西海岸辺境伯には国防の任務だってあるのだ。いつまでも領地を空けておくわけにはいかなかった。


「――という感じで進めておいたから」

「ありがとうございます!」


 モルドレッド殿下は政務官に助けられながら、貴族の方々から次々と政務の引き継ぎを受けていた。


 国王陛下は未だ意識が混濁しており、とても政務を行えるようなお身体ではなかった。

 とはいえ、ここ半年ほど国王陛下が行うべき政務の三分の一ほどは、すでにアーサー殿下がモルドレッド殿下へ任せていらっしゃったし、残りも政務官たちとアーサー殿下で手分けして処理していたらしい。そのため、思ったほど大きな混乱はなく仕事に当たれていた。


 それでも不明な点があれば、モルドレッド殿下は潔く牢へいるアーサー殿下のもとへ聞きに行っていた。


「牢に入ってまで仕事をさせられるとは思わなかったな……少しくらい休ませてもらえると思ってたのに」


 モルドレッド殿下が顔を出すたび、アーサー殿下は一応不満を口にはするものの、結局は笑いながら何でも答えてくれるらしい。


「誰のせいですか、誰の! 兄上が進めていらした河川周辺工事の取りまとめ資料は、どちらにございますか?」

「それは書斎の三番目の引き出しだよ。四番目に河川ごとの降雪量をまとめた資料も入っているから、参考にするといい。あと治水関連で言えば――」


 そんな調子で、一応はうまく回っているらしいとモルドレッド殿下から聞いていた。


 ちなみに、私は一度も顔を出していない。

 私とアーサー殿下は能力が似ているせいか、昔からどうにも相性が良くないのだ。


「ちゃんと話してみれば、意外と仲良くなれるかもよ?」


 とモルドレッド殿下には勧められたけれど、私は丁重にお断りしておいた。


 そんな慌ただしい日々を過ごすうちに、豊穣祭の時期になった。

 国王陛下はどうにか会話ができるところまで回復なさり、今年の豊穣祭へのご参加は叶わなかったものの、正妃殿下が陛下のお言葉を伝えてくださったことで、大きな混乱もなく豊穣祭を執り行うことができた。


 やがて秋も深まり、ある日、モルドレッド殿下と私は父に呼び出された。
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