策士な財閥ホテル王は政略妻との初恋を実らせる
 一週間後。私たちは開催場所のスイートキングズホテル東京のバンケットルームの前にいた。

 主催のイベント会社に受付で参加費を払う。

 私の分は誘った由衣が払うときかなくて、押し問答の末、参加費は私が払うけど後日スイーツをご馳走してもらう約束をした。

 一般的なものがどんな感じなのかよくわからないけれど、今回の婚活パーティーはなるべく多くの方と話せるように、スタンプラリーの形式を取っている。

 参加者と会話してスタンプをもらい、貯まると最後にプレゼントをいただけるルールなのだそう。

 大勢の参加者が集まり、開始時刻を迎えた。

 会場の端で様子をうかがっていると、由衣は丸眼鏡の優しそうな男性と会話が弾んでいるようだった。

 時折こちらに目配せして、緊張した面持ちながら微笑んでいる。

 どうやら今回の婚活パーティーは、これまでよりリラックスして楽しめているみたい。

 少しでも親友の力添えができたのならうれしいな……。

 頬を赤らめて笑う由衣を見ていたら心が温かくなって、こちらまで口もとを緩めたときだった。

「すみません、人違いでしたら申し訳ないのですが」

 話しかけてきた相手に目を向けると、見知った男性がこちらにスタンプカードを差し出している。
 
「福本美雨さんですよね?」

 名前を呼ばれ、ビクッとした。

 福本建設の総務部の先輩、後藤(ごとう)忠司(ただし)さんだ。

 こんなところで知り合いに会うなんて……。

「そ、そうです。奇遇ですね」

 毎日会社で顔を合わせるのだから他人を装うのにも無理がある、と観念する。

 頬を引きつらせて苦笑を浮かべると、後藤さんは細い目を見開き、ニヤッと口もとを歪めた。

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