策士な財閥ホテル王は政略妻との初恋を実らせる
ホテルを出て、プライベートビーチに向かった私たちは並んで白い砂浜を歩く。
ハワイの海は透明度が高いとガイドブックなどで知ってはいたが、本当に美しくて吸い込まれそうだった。
「すごくきれいですね」
感動のあまり平凡な感想しか出てこない私に、雪成さんが優しく睫毛を伏せて微笑んだ。
「ああ。この美しい海が長続きするために、環境への配慮は欠かせない。プラスチック製品はなるべく使わないようにしているよ」
「そうなんですね」
環境を守る取り組みは素晴らしいと思う。
話しながら歩いていると、昨夜部屋の窓から見た茅葺き屋根のヴィラが建ち並ぶそばまで来た。
観光客たちがリラックスして、食事や風景を楽しんでいる。
黄昏に染まる水平線に向かい、桟橋が作られていた。
好奇心からそちらの方へ歩き、きれいな海の中に魚影が見えるとうれしくなって、つい屈み込んで身を乗り出してしまう。
ガイドブックにはウミガメを見るツアーがあると載っていた。
でもあまり近づいてはいけないんだよね……などと考えていたら。
「っきゃ!」
サンダルの足もとがぐらつき、体勢を崩す。
上半身の自由が効かず、慌ててバランスを取ろうとするも、海の方へ体がもっていかれそうになったとき。
「――おっと」
落ちそうになった私の体は、背後から抱きしめられる形で静止した。
「平気?」
「は、はい。ありがとうございます」
危なかった。あと少しで海に落ちそうだった。
ヒヤッとして心拍数が上がった私は安堵して、うしろから抱きとめていてくれる雪成さんの腕を胸もとでギュッと掴む。
しかし、即座にその手を離した。
「ごめんなさい! 私、重たかったですよね」
鼓動がバクバクと壊れたみたいに高鳴った。
これは落ちそうになって動転しているのではなく、雪成さんと密着しているからに他ならない。
「いや、全然だよ」
スマートな雪成さんは、恥ずかしくて後退する私に一歩近づいた。
「美雨を守るのは夫である俺の役目だから」
するりと手を伸ばし、雪成さんは自然に私の腰に手を回す。
甘い言葉で微笑んで、ぽかんとする私を再び抱き寄せた。
茅葺き屋根の下にはまだ観光客たちがいて、私たちが立っている桟橋はその人たちの目線の先にあるから、注目を浴びている気がしてしまう。
「あの、雪成さん」
体を密着させ、至近距離になり、おそるおそる声を絞り出す。
「離して、くださいませんか?」
「どうして?」
身をよじる私を、雪成さんは平然と見下ろした。
「どうしてって、その……。人目のある場所でこんなに近づかれたら、ド、ドキドキしますから」
しどろもどろになりながら体をうしろに退かせようとするも、強い力でまた引き戻される。
「離さない。妻にはドキドキしてほしい」
片眉にアクセントをつけた雪成さんは、大人の男の色香をまとっていて私を狼狽させた。
「だけど、それって人目がなければ近づいてもいいってことか?」
雪成さんが神妙な顔で私に聞いた。
ハワイの海は透明度が高いとガイドブックなどで知ってはいたが、本当に美しくて吸い込まれそうだった。
「すごくきれいですね」
感動のあまり平凡な感想しか出てこない私に、雪成さんが優しく睫毛を伏せて微笑んだ。
「ああ。この美しい海が長続きするために、環境への配慮は欠かせない。プラスチック製品はなるべく使わないようにしているよ」
「そうなんですね」
環境を守る取り組みは素晴らしいと思う。
話しながら歩いていると、昨夜部屋の窓から見た茅葺き屋根のヴィラが建ち並ぶそばまで来た。
観光客たちがリラックスして、食事や風景を楽しんでいる。
黄昏に染まる水平線に向かい、桟橋が作られていた。
好奇心からそちらの方へ歩き、きれいな海の中に魚影が見えるとうれしくなって、つい屈み込んで身を乗り出してしまう。
ガイドブックにはウミガメを見るツアーがあると載っていた。
でもあまり近づいてはいけないんだよね……などと考えていたら。
「っきゃ!」
サンダルの足もとがぐらつき、体勢を崩す。
上半身の自由が効かず、慌ててバランスを取ろうとするも、海の方へ体がもっていかれそうになったとき。
「――おっと」
落ちそうになった私の体は、背後から抱きしめられる形で静止した。
「平気?」
「は、はい。ありがとうございます」
危なかった。あと少しで海に落ちそうだった。
ヒヤッとして心拍数が上がった私は安堵して、うしろから抱きとめていてくれる雪成さんの腕を胸もとでギュッと掴む。
しかし、即座にその手を離した。
「ごめんなさい! 私、重たかったですよね」
鼓動がバクバクと壊れたみたいに高鳴った。
これは落ちそうになって動転しているのではなく、雪成さんと密着しているからに他ならない。
「いや、全然だよ」
スマートな雪成さんは、恥ずかしくて後退する私に一歩近づいた。
「美雨を守るのは夫である俺の役目だから」
するりと手を伸ばし、雪成さんは自然に私の腰に手を回す。
甘い言葉で微笑んで、ぽかんとする私を再び抱き寄せた。
茅葺き屋根の下にはまだ観光客たちがいて、私たちが立っている桟橋はその人たちの目線の先にあるから、注目を浴びている気がしてしまう。
「あの、雪成さん」
体を密着させ、至近距離になり、おそるおそる声を絞り出す。
「離して、くださいませんか?」
「どうして?」
身をよじる私を、雪成さんは平然と見下ろした。
「どうしてって、その……。人目のある場所でこんなに近づかれたら、ド、ドキドキしますから」
しどろもどろになりながら体をうしろに退かせようとするも、強い力でまた引き戻される。
「離さない。妻にはドキドキしてほしい」
片眉にアクセントをつけた雪成さんは、大人の男の色香をまとっていて私を狼狽させた。
「だけど、それって人目がなければ近づいてもいいってことか?」
雪成さんが神妙な顔で私に聞いた。