策士な財閥ホテル王は政略妻との初恋を実らせる
「安心、って」
対面する雪成さんから、ほとんど吐息のような声が漏れる。
「雪成さんがお辛い思いをしてないのなら良かったです。体調を崩して明日の大事なパーティーに差し支えてはいけないですから」
「きみって人は……」
眉根を寄せ、雪成さんは厳しい目で私を射抜いた。
「騙されやすい、ってよく他人から言われないか?」
「いえ」
即答すると、雪成さんは文字通り頭を抱える。
「でも、雪成さんになら騙されてもいいですよ? 信頼してますから」
言うが早いか、端正な表情を崩さない雪成さんにギュッと全身を強く囲い込まれ、逃れられない。
「雪成さん?」
「こうさせてるのは美雨だよ」
苦しくて声を上げた私の耳のすぐそばで、低い声が甘く響く。
私がさせてるって、どういう意味だろう。また、からかっているのかな。
雪成さんには特別な意味などないのかもしれないけれど、私はいちいち過剰に反応してしまう。
「雪成さんはいつもそうやってからかいますけど、私はどうしていいかわかりません……」
嫌な気持ちはしない。
むしろ距離が近づいた気がして、新たな一面を知れて、うれしくて舞い上がる。
うつむいて唇を噛む私を、雪成さんが覗き込んだ。
「かわいい」
今悩んでる思いを素直に打ち明けたのだけれど……。
雪成さんは蜂蜜を溶かしたような声色でささやき、惜しげもなく甘い笑顔を私に向ける。
「ほら、またそうやって」
当惑した私が顔をそむけ、体を捻って離れようとすると、腕をギュッと掴まれた。
「からかってないよ、これまで一度も」
透き通るほど澄んだ瞳で見つめられ、瞬きを忘れる。
「きみに本気だ」
凛とした声が耳に届き、信じられなくて心臓が早鐘を打った。
「スタッフから聞いたよ。今日ホテルで、きみが迷子を助けてくれたって」
雪成さんの言葉に、私は今日の出来事を回想する。
そして静かに首を左右に振った。
「助けただなんて、大げさです。たまたま私が近くにいて、言葉が通じるからあの男の子も安心してくれただけですよ」
「その後も、美雨がずっと寄り添ってあげてたって聞いたよ」
雪成さんは穏やかに言い、包容力のある優しい眼差しを私に向ける。
「メモ帳で折り紙をしたり、優しくお喋りしたりして、母親が来るまでそばにいてくれたんだろ? 感謝する」
「いえいえ、そんな。全然たいしたことではないですから」
対面する雪成さんから、ほとんど吐息のような声が漏れる。
「雪成さんがお辛い思いをしてないのなら良かったです。体調を崩して明日の大事なパーティーに差し支えてはいけないですから」
「きみって人は……」
眉根を寄せ、雪成さんは厳しい目で私を射抜いた。
「騙されやすい、ってよく他人から言われないか?」
「いえ」
即答すると、雪成さんは文字通り頭を抱える。
「でも、雪成さんになら騙されてもいいですよ? 信頼してますから」
言うが早いか、端正な表情を崩さない雪成さんにギュッと全身を強く囲い込まれ、逃れられない。
「雪成さん?」
「こうさせてるのは美雨だよ」
苦しくて声を上げた私の耳のすぐそばで、低い声が甘く響く。
私がさせてるって、どういう意味だろう。また、からかっているのかな。
雪成さんには特別な意味などないのかもしれないけれど、私はいちいち過剰に反応してしまう。
「雪成さんはいつもそうやってからかいますけど、私はどうしていいかわかりません……」
嫌な気持ちはしない。
むしろ距離が近づいた気がして、新たな一面を知れて、うれしくて舞い上がる。
うつむいて唇を噛む私を、雪成さんが覗き込んだ。
「かわいい」
今悩んでる思いを素直に打ち明けたのだけれど……。
雪成さんは蜂蜜を溶かしたような声色でささやき、惜しげもなく甘い笑顔を私に向ける。
「ほら、またそうやって」
当惑した私が顔をそむけ、体を捻って離れようとすると、腕をギュッと掴まれた。
「からかってないよ、これまで一度も」
透き通るほど澄んだ瞳で見つめられ、瞬きを忘れる。
「きみに本気だ」
凛とした声が耳に届き、信じられなくて心臓が早鐘を打った。
「スタッフから聞いたよ。今日ホテルで、きみが迷子を助けてくれたって」
雪成さんの言葉に、私は今日の出来事を回想する。
そして静かに首を左右に振った。
「助けただなんて、大げさです。たまたま私が近くにいて、言葉が通じるからあの男の子も安心してくれただけですよ」
「その後も、美雨がずっと寄り添ってあげてたって聞いたよ」
雪成さんは穏やかに言い、包容力のある優しい眼差しを私に向ける。
「メモ帳で折り紙をしたり、優しくお喋りしたりして、母親が来るまでそばにいてくれたんだろ? 感謝する」
「いえいえ、そんな。全然たいしたことではないですから」