策士な財閥ホテル王は政略妻との初恋を実らせる
 翌日、リゾート開発の着工パーティーが盛大に行われた。

 スイートキングズホテルハワイはホスピタリティの高さから、世界中のセレブや観光客から大人気のラグジュアリーホテルである。

 今回新たに城下不動産はホテルのほか、住居としてのレジデンスを建設して販売し、さらにプールやスパ、水族館にシアターといった施設も充実させるつもりだ。

 世界中からの注目度が高く、パーティーの招待客は関連企業のほか政府関係者や複数のマスコミ、有名アーティストなど数百人規模におよぶ。

 これまで類を見ない盛大さで、私は朝から緊張していた。

 いよいよ開始時間が近づき、スイートルームにスタイリストの女性がやってきて、用意されたドレスに着替える。

 袖とスカートの裾にレースがあしらわれたミドル丈の黒いワンピースは、憧れの高級ブランドの新作だった。

 首元はハイネックで、袖はノースリーブ。ほどよい肌見せでビーチリゾートに合っている。

 同じ高級ブランドのレースアップパンプスも、すごくおしゃれで私好み。

 ヘアは緩くナチュラルなアップスタイルにしてもらい、メイクは長時間のパーティーでも崩れないようくっきりと施してもらった。

 おかげでなんだかいつもの自分ではないような、鏡に映る姿が見慣れなくてソワソワする。

 仕上げに日本から持ってきたエンゲージリングを左手の薬指に嵌めた。

「美雨、準備はどう?」

「はい、完了しました」

 部屋に雪成さんが入ってきて、私たちは対面した。

 彼は黒くてやや光沢のある細身のセットアップスーツに、白いシャツ、シルバーのネクタイを締めている。

 前髪はサイドに流して固め、いつにも増して品がある。

 雪成さんが、手の届く距離で立ち止まる。

 お互いに無言で見つめ合う僅かな時間が流れ、先に口を開いたのは雪成さんだった。

「すごくきれいだ」

「あ、ありがとうございます」

 声が上擦る。

 緊張しているのが伝わったのか、雪成さんはスッと手を伸ばすと、私の肩を胸もとに引き寄せた。

「ほかの人に、見せたくないな」

 独占欲を誇示するかのような発言に、驚くと同時にカッと頬に熱が宿る。

「体調はどう? その、痛いところとか」

「ないです。大丈夫です」

 気遣ってくれるのはうれしい。

 けれども、昨夜の情事を思い出して、ますます顔面が熱くなる。

「それでは私は失礼します」

 スタイリストさんが笑顔で挨拶し、退室した。

「ありがとうございました!」

 私は慌ててお礼を言い、去り際の彼女に頭を下げた。
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