策士な財閥ホテル王は政略妻との初恋を実らせる
 スイートキングズホテルハワイのバンケットルームで開かれたパーティーは想像より遥かに盛大で、会場の規模も華やかな雰囲気も圧巻だった。

 雪成さんとともに招待客ひとりひとりに挨拶をして回る。

 雪成さんが私を紹介し、結婚したと告げると、みな一様に祝福してくださるからこそばゆい。

 それを表情に出さずに、平然と笑顔を浮かべ丁寧に接するよう心がけた。

「美雨、疲れただろう? 少し休もうか」

「いえ、私なら平気です」

「でもずっと立ちっぱなしだから。休んでほしいんだ、俺が」

 雪成さんが紳士的に私をエスコートして、会場内に設置されたソファに移動した。

「ずっと食べてなかったな。なにかもらって来ようか? 飲み物も」

 私をソファに座らせると、雪成さんが優しく尋ねる。

 緊張と妙な興奮で胸がいっぱいで、食欲がわかなかった。

 今日の彼は本当に王子様そのもの。会場内の誰よりも輝いている。

 その証拠にすれ違う招待客たちは必ず振り返るし、雪成さんを目で追っている女性も少なくない。

 それに、こんなに気遣ってくれる優しくて温かい人となり。

 きっとこれまでも多くの女性が、彼を好きになったのだろう。

 私よりも恋愛経験が多いからこそ、女性の扱いには慣れている。

 そう考えたら、胸の奥がチクリと痛んだ。

「美雨?」

「あ、ごめんなさい。大丈夫です。ありがとうございます」

 腰を屈めた雪成さんに至近距離から顔を覗き込まれ、取り繕いの笑顔で答えたときだった。

「雪成、久しぶりね」

 背後から雪成さんの肩にを親しげにポンと叩いたのは、鮮やかな真紅のドレスがとてもよく似合う若い女性だった。

「マリカ」

 雪成さんは臆面もなく、呼び捨てで彼女に応じる。

「美雨、紹介する。こちら本庄(ほんじょう)マリカさん」

 慌ててソファから立ち上がる。

 マリカさんはスラリとした長身で、私との身長差は二十センチはありそうだった。

 それに真紅のドレスが霞むほどの美貌に思わず息を呑む。

 露出度が高いキャミソールにスリットスカートのドレスを、異次元のスタイルでサラリと着こなしている。

 長い黒髪はつやつやで、私を誰何する目は黒目が大きく、鼻筋もくっきりと深い。

「はじめまして、美雨です」

 圧倒的な美女を前に気圧されて、声が小さくなった。

「へえ、あなたが雪成の婚約者ね。お噂は聞いてるわ」

 マリカさんは形のいい唇をニッコリと真横に広げ、私に手を差し伸べた。

「婚約者じゃないよ、マリカ。俺たち入籍したから」

 握手を交わす私たちの横で、雪成さんがそう告げた直後。

「え! 結婚したの?」

 マリカさんが声を大にする。

 握手する彼女の手の力がギュッと強まった。
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