策士な財閥ホテル王は政略妻との初恋を実らせる
 ひとりでいる時間が長いと、どうしても今置かれた状況に思い悩んだ。

 ほかに思い合う女性がいるのにこのまま婚姻関係を続けていいのか、考えすぎて眠れない夜が多い。

 だからストレスで、体と心が疲れているのかな、などとぼんやり考えていた。

 けれども、ハワイ島での出来事から一ヶ月後。生理が遅れていると気づいた。

 ハワイ島での一夜は避妊していなかったと記憶している。

 雪成さんが私に対して抱く感情が愛情ではないにしろ、城下家に嫁いだ以上跡継ぎは必要だ。

 避妊しなかったのはたぶんそういう理由だと推察できた。

 すぐにドラッグストアで購入した簡易的な尿検査では、やはり陽性だった。

 そうなんじゃないかなってある程度冷静に分析し、予想していた。

 それでも実際に現実を突きつけられると、とたんに不安になる。

 検査キットを持つ手が震えた。

 両親の間に愛情がない状態で生まれた子は、幸せになれるのだろうか……。

 心音が大きくなり、手のひらが汗ばむ。

『熱じゃなくて、きみの色香にあてられてる』

 雪成さんの言葉が不意に頭に浮かんだ。

『ごめん。美雨があまりにもかわいいから、加減できなくて』

 ベッドの上で、雪成さんの唇が熱くて、火傷するんじゃないかと心配したっけ。

『だが、ずるいと思われてもいい。きみを手に入れられるなら』

 でもあの言動は、これまで数多の女性と過ごしてきた彼の気まぐれなんだ、きっと。

 マリカさんもふたりの置かれた立場を理解し、この状況を受け入れているのかもしれない。

 だとしたら、このまま婚姻関係を続けていくのは誰ひとりとして幸せにはなれない。

 私が雪成さんと別れ、ひとりでお腹の子を育てるのが一番理想の形なんじゃないかと思えた。

 震える手のひらをお腹にあてる。

 まだ実感がわかないけれど、私の中で生きていてくれているのだと思ったら、すでにいとおしい気持ちでいっぱいになった。

 守りたい、なにがあっても。

 父親の愛情は注がれなくても、母である私が精一杯愛して毎日楽しく健やかに過ごしたいし、できるかわからないけれど立派に育てたい。絶対に幸せにしたい。

 そう心の中で強く願った。
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