策士な財閥ホテル王は政略妻との初恋を実らせる
5 絶対にきみを手放さない Side雪成
 ハワイ島でのパーティーから帰国後、美雨の態度はどこか他人行儀だった。

 俺は現在進行中のリゾートホテル開発のため海外への視察が多く、出張の日が続いている。

 帰国して美雨が待つマンションに帰宅すると、彼女は手料理を振る舞ってくれた。

 数日間、会いたくてたまらなかった美雨の笑顔に癒やされ、美味しい料理に心も体も満たされる。

 そんな幸せな時間に、美雨の気持ちがどこか違う方向へ向いている気がして不安になった。

 食事中、出張であった出来事を話してもうわの空だし、ため息が多く表情も暗く硬い。

 その理由を、実のところ予測できていた。

 美雨の俺への態度はよそよそしく、目を見てくれないし、ソワソワして距離を取りたがる。

 つまり、俺は避けられていた。

 それはハワイ島でのパーティーを終えてから顕著だったと記憶している。

 かわいらしく天真爛漫な彼女をそんなふうにさせたのは、おそらくハワイ島で俺が欲望に溺れ、抱き潰したせいだろう。

『それに意地悪だし。私は初めてだから、いっぱいいっぱいなのに……』

 美雨はそう、肩を震わせて打ち明けてくれたのに、その姿もまた際限なくいとおしくて、俺は理性を失ったも同然だった。

 ハァ、とため息を吐き、文字通り頭を抱える。

 そもそももとを辿ればこの政略結婚も、ゆくりなく成立した関係ではない。

 福本建設の経営が危ういと知ったうえで、美雨ならきっと断らないだろうと仕向けた自分は狡猾だった。

 俺の行動は彼女の気持ちを蔑ろにしていたのではないだろうか……。

 そう思い悩まない日がないと言えば嘘になるが、それでもどうしても美雨を手放したくなかった。

 最初はどんなふうに成長したか気になる程度の存在だったが、同居して夫婦生活を送るうちに、懐かしい気持ちと新鮮な姿にどんどん惹かれていった。

 体調を気遣い懐かしい手料理を振る舞ってくれたり、無防備に寝ている俺の濡れた髪を臆面もなくタオルで拭いてくれる。

 俺はあのとき寝たふりをしていて、美雨にものちに打ち明けたが、彼女と初めて会った日を思い出していた。

 魅力的な女性に成長した美雨に引き合わせてくれた祖母に感謝したいと、心から思ったとき。

『お疲れなのに、付き合ってくださってありがとうございました。風邪、引かないでくださいね』

 澄み切った言葉に、ふたりで過ごす夜に淡い期待を抱いていた俺は、思わずピクリと眉根を寄せる。

『また一緒に食事しましょうね。できればこれからずっと、毎日』

 毎日、一緒にって……。プロポーズか?

 かわいすぎるだろ、と。柄にもなく舞い上がった。

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