策士な財閥ホテル王は政略妻との初恋を実らせる
 だからあの夜は、自制が効かないほど美雨に溺れた。

 自己弁護するつもりはないが、なるべく体に負担がかからないよう配慮はしたつもりだ。

 しかし、自信がない。

 慎重に触れながらも、陶酔し、我を見失っていたら……。彼女を傷つけていたかもしれない。

 俺にとっては夢のような一夜の後。

 ハワイ島での統合型リゾートの着工パーティーが執り行われ、その際ひとりの給仕係が熱中症で倒れた。

 いち早く彼女の異変に気づき、駆け寄り助けを呼んだのが美雨だったらしい。

 着工式の責任者としてスピーチなど仕事をこなしていた俺は、のちにスタッフから報告を受けた。

 美雨は倒れた女性に付き添い控室に向かったと聞き、すぐさま追いかける。

 報告を受けたとき、ともにプレス撮影をしていたマリカも心配し一緒に移動した。

 すぐにふたりが過ごす控室に向かいたかったが、マリカに話があると呼び止められた。

 彼女の飛行機の時間が差し迫っていたため、短時間だけ応じた。

 幼い頃から知っている間柄とあって、うしろ暗い一件も俺の新たな一面も、正直に話せた。

 少し遅れをとったせいか、給仕係の女性の控室を訪れたときには美雨の姿は部屋にはなかった。

 気になりつつ、プライベートジェットで東京に戻ってきた。

 それから美雨の俺への態度はよそよそしくなり、一緒にいても楽しそうではなかった。

 彼女の気持ちを蔑ろにして強引に手に入れようとしたためか……。

 そう考えると、胸が痛くて仕方なかった。

 俺の口実や、思惑や、策略に辟易としているのではないだろうか。

 彼女の素直な気持ちを利用した俺には、彼女を愛する資格がないかもしれない。

 しかし、心から愛した女性の夫の座を降りるつもりはさらさらない。

 たとえ卑怯な手練手管だったとしても、誰にも譲れないほど美雨を愛している。

 彼女にこの気持ちをきちんと話さなくては……。

 そう決意した数日後、秋に予定されている俺たちの結婚式の打ち合わせが行われた。

 場所はスイートキングズホテル東京のバンケットルーム。

 縁を繋いでくれた祖母のためにも盛大な式にしたいという両親の意向があり、初めての打ち合わせだ。
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