策士な財閥ホテル王は政略妻との初恋を実らせる
 十月吉日。

 安定期に入り、私たちの結婚式が執り行われた。

 スイートキングズホテル東京の一番広いバンケットルームには、両家の関係者のべ五百人以上が披露宴に招待された。

 親類のほか、縁のある仕事関係者はもちろん、政財界の有力者や国会議員に至るまで、幅広い有名人の顔ぶれに正直当惑した。

 だけど、大好きな友人である由衣やマリカさんも出席してくれて、笑顔で祝福してもらえたのがとてもうれしかった。

 うれしかったと言えば、母の実家、水沢温泉郷のみなさんも城下不動産には感謝していて、代表で叔父と叔母が忙しいさなかに出席してくれた。

 以前訪れてくださった雪成さんのご両親と話が弾んでいる様子を見て、自分たちだけではなく家同士の繋がりも深く濃く広がったことに感謝した。

 母にも参列してほしかったな……。

 そう思わずにはいられなかった。

 式では、スイートキングズホテル東京のブライダルチームが、私が疲れないよう終始配慮してくださった。

 白無垢は腹部に負担の少ないものを手配してくださり、タイムスケジュールも休憩を取れるよう工夫されていた。

 お色直しは淡いブルーのドレス。

 銀色の刺繍が施され、動くたびにキラキラとまるで水面のように光を反射し、トレーンは波さながらの美しいデザイン。

 ひと目見たときからハワイ島の美しい海を彷彿として、とても気に入った。

 それに、担当のプランナーの方が似合うと太鼓判を押してくれた。

 彼女は私が雪成さんの妻だと知り、目を見開いていた女性だ。

 きっとネットニュースで配信されていたマリカさんじゃなかったから驚いたのだろうと思っていたけれど、それは私の見当違いだった。

 そのプランナーさんによると、雪成さんの私への態度があまりにも甘々だから、目を疑ったのだという。

 打ち合わせを重ねるうちに、年も近く最近結婚したばかりという共通点があって親しくなり、打ち明けてくれた。

 これまでの雪成さんは社長として、いつもポーカーフェイスで喜怒哀楽を表情に出さず、淡々と仕事をこなす飄然としたイメージがあったそう。

 それなのに、その印象を覆すほど妻を甘く見つめて抱き寄せ、結婚式も私の希望を優先してほしいと再三要求したことに、言葉を失ったのだそう。

 でも、そういった意外なギャップのある雪成さんはスタッフたちからは大評判で、尊敬の念が増したのだとか。

 特に奥様を大切にされている様子が素敵だとも言ってくれた。

 その見解は私も同意ですごくこそばゆく感じつつも、担当プランナーさんとの打ち合わせはとても楽しく進んだ。

 話しやすくて頼りになる彼女は、盛大な結婚披露宴に不安があった私にとって、心強い存在だった。

 素晴らしいスタッフに恵まれているのは、雪成さんがトップとして慕われている証拠だと感じる。

「きれいだよ、美雨」

 雪成さんはお色直しのたびに、歯が浮くような台詞で私の頬を紅潮させた。

 だけど、タキシード姿の雪成さんのほうが、比喩ではなく本当に王子様を具現化したようなうっとりとする美しさだった。

 彼の周囲にはキラキラと星がまたたいて見える。

 息を呑むほど端正な容貌とスタイルに、プランナーさんはもちろん、招待客の誰もが釘付けになっていた。

 左手の薬指には、約束通り購入した、シンプルなデザインのお揃いのマリッジリング。

 世界一の素敵な旦那様に愛されて、私は幸運だ。
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