優秀な後輩で私も嬉しく思うので、どうぞ『先輩離れ』してください
 アイスブレイクなどを済ませた後、私は努めて冷静に資料の説明を始めた。
 ターゲット層の分析、競合他社の動向などについて説明していく。さらなる意見も勿論組み込む予定だが、欠かせない情報は事前に揃えておいた。

「今回のコンセプトは『日常に寄り添う』というものになります。ブームのような市場展開ではなく、長くお客様に愛していただけるような市場展開を第一に考えるのはいかがでしょう」
「意見、いいですか?」

 間髪入れずに手を挙げたのは、予想通り一ノ瀬くんだった。指名すると、彼は私が座るのと変わるように立ち上がる。

「永続的な支持を得るためにも、まずは商品に触れる母数を増やすべきではないでしょうか」
「確かに…そうね」
「そのためにも、ブーム狙いはありだと思います。今後の展開にもよりますが、ターゲット層を現段階で決める必要はないかと」
「皆さんはどう思いますか?」

 話を振ると頷く人が多い。半数以上の賛同は見られたため、彼の言う通りターゲット層は広く見積もることにした。

「ありがとうございます。一ノ瀬くんみたいに、遠慮なくどんどん意見を言ってくださいね。的外れでも構いません。少しでも気になることがあれば、皆で議論していきましょう」

 彼の意見を皮切りに、数人手を挙げて意見を言ってくれた。活発な会議は素晴らしい。それを感じながら、出てきた意見をパソコンに打ち込み、スクリーンに映していく。

「先輩、多分ここを右側にした方が見やすいです」
「本当?…あ、確かにそうね」

 後輩にアドバイスをされている構図だが、彼に関してはもう悔しさとかも感じない。先輩後輩関係なく、人から貰うアドバイスは有難く頂戴するに越したことはないことは十分理解している。

 その後も沢山の意見をまとめ、その日の会議は順風満帆に終わった。
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