アンコールはリビングで
2. ロケバスという名の楽屋

島崎さんの運転するミニバンが、高尾山口駅近くの駐車場に滑り込む。

窓の外には、すでに何台ものマイクロバスや機材車が停まっていた。
スタッフたちが慌ただしく動き回っているのが見える。

「島崎さん、長いこと運転あざっす」

俺は島崎さんに労いの声をかけ、車を降りる。

ひんやりとした山の空気が肺を満たす。都心よりも数度低い気温が、これから始まる長い一日を予感させた。

「早瀬さん! おはようございます!」

「おはようございます! 今日はよろしくお願いします!」

俺が姿を見せると、ADやメイクスタッフたちが元気よく挨拶をしてくる。
俺も一つ一つ丁寧に返しながら、自分専用に用意されたロケバスへと向かった。

主演クラスになると、着替えやメイクのための個室(といってもバスの中だが)が用意される。

ここで「早瀬湊」から、IT社長「佐伯怜司」へと変身するのだ。

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