アンコールはリビングで
軽口を叩きながら、俺は膝の上に置かれたロケ弁を開けた。

冷え切ったハンバーグと、唐揚げ。
昼も揚げ物だったな、と思いながら割り箸を割る。

(……くそ……っ、分かっちゃいたけど……晩メシもロケ弁か……)

口に運ぶと、濃い味付けが舌を刺激する。

(……間に合わなかったな……今日は朝も早かったから、凪の手料理、一度も食ってねえな……)

頭の中に、凪が作る茶色い煮物や、出汁の効いた味噌汁が浮かぶ。
派手さはないけれど、疲れた身体に染み渡るあの味。

今の俺に必要なのは、この濃いソース味じゃなくて、あの優しい出汁の味なのに。

(……茶色定食が恋しい……昼も夜も味が濃い揚げ物ばっかだわ……)

俺は窓の外を流れる夜景を見つめながら、心の中でゲンナリと呟いた。

スター・早瀬湊の一日は、ファンの歓声ではなく、恋人の手料理への渇望で幕を閉じるのだった。
< 112 / 231 >

この作品をシェア

pagetop