アンコールはリビングで

13 リビングの戦闘服

1. 火曜日の重力

夕食を終え、バスタブで一日の疲れを洗い流した後の、至福の時間。

まだ髪が少し湿ったまま、私はリビングのソファに腰を下ろした。
手には化粧水のボトル。これから念入りなスキンケアタイムだ。

ふと時計を見ると、時刻は21時55分。
あと5分で、私たちの「火曜日の儀式」が始まる。

「……お、もうすぐだな」

キッチンから冷蔵庫を閉める音がして、湊が戻ってきた。

手には炭酸水のボトル。
すでにスウェット姿でリラックスモード全開の彼は、迷うことなくソファへ向かってくる。

そして、当然のように私の太ももに頭を預け、コロンと横になった。

「……重い」

「いーじゃん、減るもんじゃなし」

湊は悪びれもせず、私の膝の上でスマホを操作し始めた。

国民的スターの頭部が、私の太ももの上で無防備に転がっている。
世の女性が見たら卒倒しそうな光景だが、私にとっては日常の風景だ。

ただ、その重みだけは、確かに彼がここに「在る」ことを教えてくれる。

「……はいはい」

私は苦笑しながら、化粧水を手のひらに広げ、パシャパシャと顔に馴染ませる。

湊のサラサラとした黒髪が、私の指先に触れる。
少しだけ邪魔だけれど、その感触は悪くない。

テレビ画面が切り替わり、ドラマ『嘘つきAIと恋のバグ』のオープニング映像が流れ始めた。

アップテンポで都会的なメロディ。

映像の中で、高級スーツに身を包んだ湊……いや、佐伯怜司が、冷徹な視線をこちらに向けている。

< 113 / 231 >

この作品をシェア

pagetop