アンコールはリビングで
「うーん……」
私は湊の前髪を指で梳きながら、天井を見上げた。
「未練が1ミリもないと言えば嘘になるかもしれないけど……。高校の時に気づいちゃったんだよね。私は『表現者』としてステージに立つ側じゃなくて、その音を支えたり、届けるための場所を作る側のほうが合ってるのかもって」
自分が弾くよりも、誰かの素晴らしい演奏を聴くほうが心が震えた。
その震えを、もっと多くの人に伝えるための「空間」を作りたかった。
「それに、そこで空間デザインの道を選ばなかったら、今の仕事もしてないだろうし……」
私は視線を下ろし、膝の上の彼と目を合わせた。
「……そしたら、湊にも出会えてなかったかもね」
最後の言葉は、自分でも驚くほど素直に出た。
もし私が音楽の道に進んでいたら、あの「ガレリアプラザ」の仕事もなかった。
冬の気配が近づく、風が冷たいあの夜に、非常階段で彼と出会うこともなかった。
私は湊の前髪を指で梳きながら、天井を見上げた。
「未練が1ミリもないと言えば嘘になるかもしれないけど……。高校の時に気づいちゃったんだよね。私は『表現者』としてステージに立つ側じゃなくて、その音を支えたり、届けるための場所を作る側のほうが合ってるのかもって」
自分が弾くよりも、誰かの素晴らしい演奏を聴くほうが心が震えた。
その震えを、もっと多くの人に伝えるための「空間」を作りたかった。
「それに、そこで空間デザインの道を選ばなかったら、今の仕事もしてないだろうし……」
私は視線を下ろし、膝の上の彼と目を合わせた。
「……そしたら、湊にも出会えてなかったかもね」
最後の言葉は、自分でも驚くほど素直に出た。
もし私が音楽の道に進んでいたら、あの「ガレリアプラザ」の仕事もなかった。
冬の気配が近づく、風が冷たいあの夜に、非常階段で彼と出会うこともなかった。