アンコールはリビングで
(……ほんと、人生って不思議。いろんな分かれ道があって、選択して……その積み重ねで今があるんだ。何気ない奇跡の連続の上に、この温もりも成り立ってるんだな)

(……湊と出会えて、本当によかった)

胸の奥がじんわりと温かくなる。

目の前の瞳が、あまりにも真っ直ぐに私を見つめているから。
その真剣な眼差しに照れ隠しをしたくなって、私は衝動的に右手を伸ばした。

「……んぐっ!?」

彼の両頬を、親指と人差指でむぎゅーっと挟む。
端正な顔立ちが、一瞬にしてアヒルのような間抜けな顔に変形した。

「……な、なふぃっ! なふぁふよきふに!(な、凪っ! なんだよ急に!)」

「あはは! 湊かわいっ……いや、ちょっと面白いかも」

「もーやふろよー!(もーやめろよー!)」

彼は抗議の声を上げながらも、本気で振り払おうとはしない。
そのやり取りがおかしくて、私は声を上げて笑った。

「さ、オープニング終わるよ! ドラマドラマ! かっこいい怜司さん、観なきゃね?」

私は手を離し、テレビ画面を指差した。

湊は頬をさすりながら、「……今のなんだったんだよ」と不満げに呟き、再び画面に視線を戻した。

< 116 / 238 >

この作品をシェア

pagetop