アンコールはリビングで
3. 令和の恋とプロ意識

「いただきます!」
「いただきます」

向かい合って手を合わせる。
今日の食卓は、山盛りのキャベツ、豚の生姜焼き、味噌汁、そしてツヤツヤの白米。湊が用意してくれていたトマトとモッツァレラチーズのカプレーゼが色を添えている。

湊は待ちきれない様子で、白米を一口頬張った。

「……っあー、美味ぇ!」

「よかった。久しぶりの白米だもんね」

「やっぱこれだわ。日本人のDNAが歓喜してる」

彼は続けて生姜焼きを口に運ぶ。
濃いめの味付けが、白米の甘みをさらに引き立てる無限ループ。

「うん、美味い。凪の生姜焼き、店出せるレベルだわ」

「ふふ、お世辞でも嬉しいですー」

私も頬張る。美味しい。
仕事終わりの体に、豚肉の旨味が染み渡る。

「湊が作ってくれたカプレーゼも味付け絶妙でおいしーっ」

「だろ?茶色くないものでも、何か作っとくかと思って…早く帰ってきた甲斐があったわ」

そう言いながら、箸が止まらない様子の湊。

それにしても、彼は本当によく食べる。白米をおかわりしながらも、その体型はモデルのようにスマートなままだ。

「湊ってさ、ほんとに何食べても体型変わらないよね……羨ましすぎるわ」

「ん? まぁ、体質もあるけどな」

彼は箸を止め、自身の二の腕あたりを軽く叩いた。

「これでも結構気を使ってんだぞ。
ライブで2時間歌って踊るにはスタミナ要るし、今回のドラマの役、ちょっと脱ぐシーンあるから絞らねぇとだし」

「えっ、脱ぐの?」

「おう。シャワーシーンがある。だから最近、ジムの負荷上げてる」

サラッと言ってのけるプロ意識。
家では「もち麦やだー」と駄々をこねている男が、見えないところでは完璧な身体を作っているのだ。
そのギャップに、改めて尊敬の念を抱く。
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