アンコールはリビングで
「……明日からまた戦場だな」

「うん。でも、大丈夫」

「……なんで?」

「湊のおかげで、充電満タンだから」

私が微笑むと、彼は一瞬きょとんとして、それからバツが悪そうに顔を背けた。
耳が赤い。

「……俺も」

彼はぶっきらぼうに言うと、恥ずかしさを隠すように、また私の胸に顔を埋めた。
その仕草が可愛くて、私は彼の髪にキスを落とした。

「……ねぇ、湊」

「ん?」

「今日の夕飯、何にする?」

「……お前の好きなもんでいいよ。……あ、でも」

「でも?」

「もち麦は勘弁な。今日は白米が食いてぇ」

「ふふっ、分かった。今日は特別に白米にしてあげる」

「よっしゃ」と小さくガッツポーズをする彼を見て、私は声を上げて笑った。

ソファの上には、脱ぎ捨てられた毛玉のスウェットと、確かな幸福の温度。
特別なことは何もない。けれど、これ以上ないほど満たされた日曜日。

私たちの「アンコール」は、明日への活力を孕んで、静かに幕を下ろした。
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