アンコールはリビングで
彼は立ち上がると、花束を持つ私の腰に手を回し、ぐっと引き寄せた。

距離がゼロになる。
整髪料と、彼の体温の匂いが私を包み込む。

「……でも、これだけで終わりじゃねぇんだよ」

彼が顔を寄せ、私の髪に唇を落とす。
そして、耳元で甘く、低く囁いた。

「今日はこれから、俺の言う通りにすること。……分かったか?」

心臓が大きく跳ねた。

その声色は、いつもの「俺様」だけど、どこか切羽詰まったような熱を帯びていて、拒否権なんてないと告げていた。

「……へ? う、うん、分かった」

「よし、いい子だ」

彼は満足げに離れると、ソファの陰から高級ブランドのロゴが入った大きな紙袋を取り出した。

「じゃあ、まずはこれに着替えてこい。
メイクもちゃんとして、出かける準備。OK?」

「えっ、これ……?」

「いいから。俺の言う通りにするって言ったろ?」

よく状況が把握できないまま、私は紙袋を受け取った。

彼がここまで準備しているなんて。
一体何が始まろうとしているの?

「お、おーけー……!」

私はバラの花束と紙袋を抱え、狐につままれたような気分で寝室へと向かった。


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