アンコールはリビングで
9 秘密の車窓と、助手席の特等席
1. 地下の隠れ家
玄関のドアを開けた瞬間、私たちの間に「暗黙のルール」が発動した。
繋いでいた手は自然と離れ、他人行儀な距離が生まれる。
(……分かってるけど、やっぱちょっと寂しいな)
家の中であれだけ甘い時間を過ごした後だと、その温度差に胸がちくりと痛む。
私は誰にも見られないよう、帽子を目深にかぶり、少し前を歩く彼の背中を追いかけた。
エレベーターが地下駐車場に到着する。
薄暗いコンクリートの空間。冷たい空気が肌を刺す。
「……こっち」
彼が顎でしゃくった先には、一台の車が鎮座していた。
マットブラックの塗装が鈍く光る、メルセデス・ベンツ Gクラス。
無骨さとラグジュアリーさを兼ね備えたその威容は、まさに「俺様」な彼にうってつけの車だ。
「……すごい」
「車、借りてきた。今日はこいつで出かけようぜ」
彼はキーのロックを解除すると、私の腰に手を回し、ぐっと顔を寄せた。
「……二人きりでな」
耳元で囁かれた低音ボイス。
その熱は、冷えた地下の空気の中で火傷しそうなくらい熱い。
さっき私が抱いた一抹の寂しさなんて、彼にはお見通しだったのかもしれない。
心臓がドクリと跳ねるのを隠しながら、私は助手席へと乗り込んだ。
玄関のドアを開けた瞬間、私たちの間に「暗黙のルール」が発動した。
繋いでいた手は自然と離れ、他人行儀な距離が生まれる。
(……分かってるけど、やっぱちょっと寂しいな)
家の中であれだけ甘い時間を過ごした後だと、その温度差に胸がちくりと痛む。
私は誰にも見られないよう、帽子を目深にかぶり、少し前を歩く彼の背中を追いかけた。
エレベーターが地下駐車場に到着する。
薄暗いコンクリートの空間。冷たい空気が肌を刺す。
「……こっち」
彼が顎でしゃくった先には、一台の車が鎮座していた。
マットブラックの塗装が鈍く光る、メルセデス・ベンツ Gクラス。
無骨さとラグジュアリーさを兼ね備えたその威容は、まさに「俺様」な彼にうってつけの車だ。
「……すごい」
「車、借りてきた。今日はこいつで出かけようぜ」
彼はキーのロックを解除すると、私の腰に手を回し、ぐっと顔を寄せた。
「……二人きりでな」
耳元で囁かれた低音ボイス。
その熱は、冷えた地下の空気の中で火傷しそうなくらい熱い。
さっき私が抱いた一抹の寂しさなんて、彼にはお見通しだったのかもしれない。
心臓がドクリと跳ねるのを隠しながら、私は助手席へと乗り込んだ。