アンコールはリビングで
2. 特別な夜の許し

運ばれてきたのは、目にも鮮やかな創作フレンチのコース料理。

普段は「腸活」だの「添加物」だのと食事にうるさい私だが、今夜ばかりは全ての理性をオフにした。

「……んん〜っ! 美味しい……!」

和牛のポワレを口に運び、至福のため息を漏らす。

湊はドラマ撮影、私は激務続きで、二人ともまともな外食は何週間ぶりだろうか。
私の作る茶色い「おばあちゃん定食」も身体には良いけれど、やはりプロの技が光る美食は心に沁みる。

「よかったな。すげぇ幸せそうな顔してる」

「だって本当に美味しいんだもん。あぁ、生きててよかった……」

「大袈裟だな。……ま、凪の作る健康和食も美味いけど、たまにはこういうのもいいよな?」

「うん、最高!」

乾杯のシャンパンに続き、料理に合わせて白ワインを少しだけいただく。
アルコールが喉を通る感覚も久しぶりだ。

「お酒なんて久しぶり……去年の前厄で倒れて以来かも」

「……そうだよな。一年前、すげぇ体調崩したもんな…」

湊が心配そうに眉を寄せた。

30歳の時に過労で倒れて以来、私は自分の食事管理にかなり敏感になって、今の健康オタク生活に至っている。
湊も、それを知っているからこそ、私の働きすぎをいつも気にかけてくれているのだ。

「今日、飲んでも大丈夫だったか? 無理すんなよ」

「うん、全然平気。飲めなくなったわけじゃないし……こういう特別な時だけ楽しむの、めっちゃいいね」

私が頬を染めてはにかむと、彼は安堵したように微笑み、自分のグラスを傾けた。

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