アンコールはリビングで
3. 小さな箱の重み

コース料理も終わり、デザートを待つ静かな時間。

ふと、湊の表情が真剣なものに変わった。
彼は足元に置いてあった紙袋を手に取ると、テーブルの上にコトンと置いた。

「凪……これ」

「え?」

「朝のバラだけじゃねぇって言っただろ?」

差し出されたのは、小さめの紙袋。

そこには、普段の私ならウィンドウショッピングでも躊躇してしまうような、ハイジュエリーブランドのロゴが金色の箔押しで輝いていた。

「え……もう今日全部が最高のデートで……嬉しくて、これ以上何かもらっちゃっていいの……?」

戸惑う私に、彼はぶっきらぼうに言った。

「いいんだよ。俺が好きでやってんだから。……ほら、中見てみろよ」

促され、私はおそるおそる袋の中に手を入れた。
指先に触れたのは、掌に収まるサイズの重厚な箱。

(……えっ、この箱、なんか、ちょっと特別感ありすぎない?)

心臓が早鐘を打つ。

バレンタインのプレゼントにしては、気合が入りすぎている。
このサイズ、この雰囲気。

(……ぷ、プロポーズ、とか……!?)

思考が一瞬で沸騰する。

いや、急だな。いやでも、もう付き合って4年だし、そろそろ……?
手震える。湊めっちゃ見てくるし。どうしよう、心の準備が!

「……開けねぇの?」

「あ、開ける! 今開ける!」

深呼吸をして、リボンに手をかける。
するり、と解ける赤い紐。

緊張の一瞬。私はジュエリーボックスを「パカっ」と開けた。

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