アンコールはリビングで
「……あちらの物も、見せてもらってもいいですか?」

「かしこまりました」

それから数十分。
俺はコーディネーターにあれこれと出してもらい、悩み続けた。

どれも綺麗だ。でも、最初の一つを超える衝撃がない。

(……やっぱ、あれだよな)

俺は再び、クロススターのネックレスの前に戻ってきた。

そしてふと、凪の言葉を思い出した。

『三十路の身体に冷えは天敵』
『厄年だから、今年は平穏無事に過ごしたいの』

本厄に怯え、健康茶を飲み、ストレッチに励む彼女。

俺がそばにいない時も、彼女を守ってくれるようなものがいい。

「あの……」

「はい」

「少し変なこと聞くんですけど……お守り的というか、魔除けというか。健康を願うというか……そんな意味合いのものって、あったりしますか?」

俺の唐突な質問に、コーディネーターは嫌な顔一つせず、穏やかに微笑んだ。

「それでしたら……やはり星のモチーフは最適かと存じます。古来より星は、旅人の道しるべであり、悪しきものを遠ざける『魔除け』や『健康』『希望』の象徴とされてきました。このクロススターのデザインは、まさに身に着ける方を守る光となるでしょう」

その言葉を聞いた瞬間、俺の中で全ての迷いが消えた。
長く悩んでいたのが嘘のように、心が澄み渡る。

これしかない。

「……ありがとうございます」

俺は顔を上げ、キリッとした表情で告げた。

「このデザインで、お願いします」

「かしこまりました」

(……やっぱ俺の第一印象、間違ってなかったわ。凪も気に入るといいな……)

会計を待つ間、俺は心地よい疲労感に包まれていた。

長丁場の買い物だったが、凪に似合うものを妥協せず選べたという達成感。
これを持って帰れると思うと、自然と顔が緩んでしまう。

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