アンコールはリビングで
「……本当は誰にも見せたくねぇけどな」

ボソリと呟かれた言葉に、ドキリとする。

「……え?」

「なんでもねぇよ。準備もできたし、行くぞ」

湊が私に手を差し出した。

大きくて、綺麗な手。
私がその手に自分の手を重ねると、彼は力強く握り返してきた。

「ちょ、ちょっと! これからどこ行くの?!」

「行けば分かる」

彼は悪戯っぽくウインクすると、エスコートするようにドアを開けた。

「……楽しみにしてろよ、凪」

その自信満々な横顔を見上げながら、私は高鳴る鼓動を抑えられなかった。

厄年も、仕事の疲れも、今はどうでもいい。

これから始まる彼との特別な一日に、私は期待で胸を膨らませながら、休日の光の中へと足を踏み出した。
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