アンコールはリビングで
(……俺が抱きしめた時、あいつの頭がこの辺にくるから……)

自分の胸のあたりを手で示し、腕の中にすっぽりと収まる彼女の華奢な体を思い出す。
肩幅はこのくらい。腰の位置はこの辺り。

毎日のように抱きしめている体だ。メジャーがなくたって、俺の腕がサイズを覚えている。

「……彼女、かなり華奢で小柄なんで、一番小さいサイズで大丈夫だと思います」

「かしこまりました。こちら、シルエットがとても綺麗に出るデザインですので、華奢な方には特にお似合いになると思いますよ」

店員の言葉に、俺はマスクの下でニヤリと笑った。

「じゃあ、これでお願いします」

両手には、期待の詰まったブランドの紙袋。
片方は服、片方はジュエリー。サイズは違うが、どちらにも俺の想いがパンパンに詰まっている。

時計を見ると、16時半を少し回ったところだ。
完璧なタイムマネジメント。

「……よし、急いで帰らねぇと。風呂掃除が待ってる」

足早に駅へと向かう。

頭の中には、これを受け取った時の凪の驚く顔。
そして家に帰れば、溜まった洗濯物の片付けに、風呂掃除と湯張り。

さらには、茶色くない夕飯の一品――『トマトとモッツァレラのカプレーゼ』作りという重要ミッションが待っている。

国民的スター・早瀬湊の、忙しくも幸せな午後は、まだ終わらない。
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