アンコールはリビングで
3. アーティストの極秘計画
同時刻、都内の所属事務所。
張り詰めた空気の中、打ち合わせスペースのソファに深く座りながら、早瀬湊は手元のスマホを見つめていた。
「……はぁ」
小さくため息が漏れる。
画面には、凪からの『残業確定』の文字。
週明けの彼女が忙しいのはいつものことだ。分かってはいる。
けれど、この週末が最高すぎた反動か、家に帰っても彼女がいない時間を想像すると、いつもより部屋が広く、寒く感じる気がした。
土曜のデートだけでなく、昨日一日中家でくっついて過ごした体温が、まだ肌に残っているせいかもしれない。
「早瀬くん、大丈夫? なんか渋い顔だね」
不意に声をかけられ、湊はハッと顔を上げた。
声の主は、向かいに座っていたマネージャーの島崎だ。
同席しているレーベルのスタッフたちの視線も一斉に集まる。
湊は瞬時にスマホを伏せ、口角を上げて爽やかな「早瀬湊」のスイッチを入れた。
「あ、いや……大丈夫ですよ。ええと、ツアーの構成の話ですよね?」
努めて明るく振る舞う。
ここでは俺は、期待を背負うアーティストでなければならない。
打ち合わせは順調だ。
アルバムのプロモーション計画も、6月から始まる全国ツアーの概要も、大枠は固まってきている。
スタッフたちの熱量も高い。この調子なら、今日の予定は夕方には全て終わるだろう。
(……夕方に終わって、直帰か)
湊は資料のツアースケジュールに目を落としながら、ふとあることを思いついた。
同時刻、都内の所属事務所。
張り詰めた空気の中、打ち合わせスペースのソファに深く座りながら、早瀬湊は手元のスマホを見つめていた。
「……はぁ」
小さくため息が漏れる。
画面には、凪からの『残業確定』の文字。
週明けの彼女が忙しいのはいつものことだ。分かってはいる。
けれど、この週末が最高すぎた反動か、家に帰っても彼女がいない時間を想像すると、いつもより部屋が広く、寒く感じる気がした。
土曜のデートだけでなく、昨日一日中家でくっついて過ごした体温が、まだ肌に残っているせいかもしれない。
「早瀬くん、大丈夫? なんか渋い顔だね」
不意に声をかけられ、湊はハッと顔を上げた。
声の主は、向かいに座っていたマネージャーの島崎だ。
同席しているレーベルのスタッフたちの視線も一斉に集まる。
湊は瞬時にスマホを伏せ、口角を上げて爽やかな「早瀬湊」のスイッチを入れた。
「あ、いや……大丈夫ですよ。ええと、ツアーの構成の話ですよね?」
努めて明るく振る舞う。
ここでは俺は、期待を背負うアーティストでなければならない。
打ち合わせは順調だ。
アルバムのプロモーション計画も、6月から始まる全国ツアーの概要も、大枠は固まってきている。
スタッフたちの熱量も高い。この調子なら、今日の予定は夕方には全て終わるだろう。
(……夕方に終わって、直帰か)
湊は資料のツアースケジュールに目を落としながら、ふとあることを思いついた。