アンコールはリビングで
2. 繋がれた指先

ホームは、電車を待つ人の列でごった返していた。
みな、一様にスマホを片手に画面に夢中になり、自分の世界に没頭している。
いつものように、その無機質な列に並ぶ。

けれど、今日は隣に湊がいる。この非日常な状況が、なんだかくすぐったい。

(……あれだけ「バレないように!」って言ってたのに)

目線は電車が来る方向を見ながら、私の手は自然と下ろされ、隣にある彼の手の甲に触れてしまった。

ビクッ、と湊の手が反応する。
けれど、彼は手を引っ込めるどころか、すぐに私の手を大きな掌で包み込み、指を絡めてきた。

「あ……ごめん。つい……」

私が慌てて離そうとすると、彼はさらに力を込めて握り返してきた。

「いーだろ、こんぐらい。周り見てみろよ」

彼は視線だけで周囲を示す。

「みんなスマホ見てて、誰も俺らのことなんか見ちゃいねぇよ。気づくわけねぇ」

「……もう。……それも、そっか」

私は小さく頷き、握られた手にきゅっと力を込めた。
繋がれた手から伝わる熱が、冷え切った指先をじんわりと解凍していく。

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