アンコールはリビングで
5. 帰るべき場所
家の鍵を開け、玄関に入った瞬間だった。
靴を脱ぐ間もなく、背後から強い力で抱きしめられた。
「……っ」
「……湊?」
普段のおふざけや色気はない。
ただ、不安を埋めるように、壊れ物を扱うように、強く、優しく抱きしめられる。
彼の胸の鼓動が、背中越しに伝わってくる。
「……なぁ、怖かっただろ……」
耳元で、少し潤んだ声がした。
「……その頃の凪、助けにいってやりたかったわ……。一人で怖かったよな……」
彼は泣きそうな声で呟く。
湊は何も悪くないのに。
この人は、これほどまでに私のことを大切に思ってくれているのか。
「……大丈夫。ありがとう、湊」
私は身体を反転させ、彼の背中に腕を回した。
「今そう言って心配してくれる湊がいるだけで、私救われたよ……。本当に」
「……これからも、なんかあったらすぐ言えよ? 絶対だぞ」
「うん、約束する」
私が頷くと、湊はふっと安堵の息を漏らし、私の頬を両手で包み込んだ。
そして、ゆっくりと顔を寄せる。
触れるか触れないか、ためらうような距離。
重なった唇は、壊れ物を扱うように繊細で、どこまでも優しかった。
欲情も駆け引きもない、ただただ慈しむようなキス。
強張っていた心が、体温と共に溶けていく。
私たちは狭い玄関で、しばらくの間、お互いの体温を分け合っていた。
過去の傷は消えないかもしれない。
けれど、それを一緒に背負ってくれる人がいる今、私はもう一人じゃない。
「……さ、ご飯にしよっか。お腹空いたでしょ?」
「……おう。早く凪の茶色い飯食って、腹満たすわ」
私たちは顔を見合わせて笑い合い、温かいリビングへと足を踏み入れた。
アンコールは、このリビングで、これからも続いていく。
家の鍵を開け、玄関に入った瞬間だった。
靴を脱ぐ間もなく、背後から強い力で抱きしめられた。
「……っ」
「……湊?」
普段のおふざけや色気はない。
ただ、不安を埋めるように、壊れ物を扱うように、強く、優しく抱きしめられる。
彼の胸の鼓動が、背中越しに伝わってくる。
「……なぁ、怖かっただろ……」
耳元で、少し潤んだ声がした。
「……その頃の凪、助けにいってやりたかったわ……。一人で怖かったよな……」
彼は泣きそうな声で呟く。
湊は何も悪くないのに。
この人は、これほどまでに私のことを大切に思ってくれているのか。
「……大丈夫。ありがとう、湊」
私は身体を反転させ、彼の背中に腕を回した。
「今そう言って心配してくれる湊がいるだけで、私救われたよ……。本当に」
「……これからも、なんかあったらすぐ言えよ? 絶対だぞ」
「うん、約束する」
私が頷くと、湊はふっと安堵の息を漏らし、私の頬を両手で包み込んだ。
そして、ゆっくりと顔を寄せる。
触れるか触れないか、ためらうような距離。
重なった唇は、壊れ物を扱うように繊細で、どこまでも優しかった。
欲情も駆け引きもない、ただただ慈しむようなキス。
強張っていた心が、体温と共に溶けていく。
私たちは狭い玄関で、しばらくの間、お互いの体温を分け合っていた。
過去の傷は消えないかもしれない。
けれど、それを一緒に背負ってくれる人がいる今、私はもう一人じゃない。
「……さ、ご飯にしよっか。お腹空いたでしょ?」
「……おう。早く凪の茶色い飯食って、腹満たすわ」
私たちは顔を見合わせて笑い合い、温かいリビングへと足を踏み入れた。
アンコールは、このリビングで、これからも続いていく。